個人CRMを日本語で使いたい人へ — DexやClayの代替として使えるアプリ比較
「Dex を試してみたけれど、UIがすべて英語で続かなかった」
「Clay(現Mesh)を使おうとしたら、前提条件として LinkedIn アカウントが必要と知って諦めた」
海外の個人CRMツールに興味を持ちながらも、言語の壁や機能の前提条件に阻まれて使いこなせなかった、という声は少なくありません。
この記事では、個人CRMとは何かを整理したうえで、Dex と Clay(現Mesh)それぞれの特徴と日本語ユーザーにとっての課題を具体的に説明します。そして、同じ目的を日本語で達成できる代替アプリとして Ennote(エンノート)を紹介します。
どのツールにも向き・不向きがあります。英語圏のネットワークが中心な方には Dex が合うかもしれません。一方で、日本語で・名刺なしで・その場で記録したい方には別の選択肢が適しています。自分に合ったツールを選ぶための情報をまとめました。
個人CRMとは何か — 法人CRMとの違い
CRM(Customer Relationship Management)という言葉は、もともと法人向けの営業・顧客管理システムを指す言葉でした。Salesforce や HubSpot に代表されるツールは、チーム全体で商談履歴や顧客情報を共有するためのもので、月額数万円〜の費用がかかり、セットアップにも相応の工数が必要です。
一方、**個人CRM(Personal CRM)**は、個人が自分の人間関係を管理するためのツールです。法人CRMが「売上に繋がる顧客」を管理するのに対して、個人CRMが扱うのは「友人・知人・ビジネス上で出会った人」です。商談パイプラインもチーム共有機能も不要で、自分一人が使うシンプルな設計が求められます。
個人CRMで管理する情報は、たとえば次のようなものです。
- いつ、どこで会ったか
- どんな話をしたか
- 次に会ったときに話したいこと
- その人の仕事や関心領域
要するに、「あの人、なんて名前だっけ」「前回どんな話をしたっけ」を解決するためのメモツールが個人CRMです。手帳にメモしている人、iPhone の連絡先メモ欄を使っている人、Notion でスプレッドシートを自作している人——それぞれがすでに個人CRM的な運用をしているわけですが、「人物に特化した構造」「再会直前に素早く引き出せる検索」「関係が冷めているかどうかの可視化」といった機能を備えた専用ツールが個人CRMです。
日本では「人脈管理アプリ」と呼ばれることもありますが、この記事ではより広い概念として「個人CRM」という言葉を使います(国内ツールとの比較は人脈管理アプリ おすすめ5選【2026年版】もあわせてご覧ください)。
Dex の特徴と日本語対応の限界
Dex とはどんなツールか
Dex(getdex.com)は、2020年代前半からシリコンバレーのスタートアップ界隈で口コミが広がった個人CRMです。「Rolodex(ローロデックス)」という昔の名刺管理ツールをデジタルで再現したコンセプトが特徴で、LinkedIn・Gmail・iCloud・Facebook・WhatsApp など複数のサービスから連絡先をインポートして一元管理できます。
公式サイト(2026年5月時点)によると、30,000人以上のユーザーが利用しており、MBA学生・スタートアップ創業者・投資家・転職者・クリエイターをターゲット層として訴求しています。
Dex の主な機能は以下のとおりです。
- 複数サービスからの連絡先統合:LinkedIn(最大9,000接続)・Gmail・Outlook・WhatsApp・iMessage・Instagram・Facebook・X から連絡先をインポート
- 連絡リマインダー:カンバン形式のボードで「そろそろ連絡すべき人」を可視化
- ミーティング前ブリーフ:カレンダー連携で、会議の直前に相手の情報と過去のやりとりを自動表示
- タイムライン付きメモ:人物ごとに会話記録や重要事項を時系列で保存
- Chrome拡張機能:LinkedInプロフィールを閲覧しながら情報を記録
- iOS / Android アプリ:モバイルでも利用可能。名刺スキャン機能も搭載
料金は月額 $12(約1,800円) の1プランのみ(7日間の無料トライアルあり)。シンプルな価格体系で、チームプランは存在しません。
日本語ユーザーにとっての課題
Dex の魅力は明確ですが、日本語ユーザーが実際に使うとなると、いくつかの壁があります。
1. UIがすべて英語
2026年5月時点の公式サイトおよびアプリに日本語対応の記載は確認できません。メニュー・通知・ヘルプドキュメントも英語のみです。英語に慣れている方には問題ありませんが、日常的に日本語で思考・記録をしている方にとって、英語UIは長期的な利用の障壁になります。
2. LinkedIn への強依存
Dex の真価は、LinkedIn の人脈と連動させることで発揮されます。連絡先の自動インポート、Chrome拡張でのプロフィール記録、ミーティング前の職歴確認——これらはすべて LinkedIn がハブになっています。
ところが、日本のビジネスネットワーキング文化において LinkedIn はまだマイノリティです。勉強会やイベントで出会った人が LinkedIn に登録していないことは珍しくなく、「カジュアルに顔見知りになった人」を管理したい用途には構造的に合いません。
3. カジュアルな出会いの記録が想定されていない
Dex はインポートした既存の連絡先を管理・育てるツールとして設計されています。「今日会ったばかりの人を、その場で15秒で記録する」という使い方は、設計の中心にありません。イベント会場でスマートフォンを開いてその場記録するUXは、Dex よりずっとシンプルなツールのほうが適しています。
Clay(現Mesh)の特徴と日本語対応の限界
Mesh(旧Clay)とはどんなツールか
個人CRMとして長く知られた Clay(clay.earth)は、2025年6月に WordPress.com の親会社である Automattic に買収され、Mesh(me.sh) にリブランドされました。clay.earth にアクセスすると me.sh にリダイレクトされます。
Mesh のコンセプトは「ゼロ手動入力の個人CRM」です。メール・カレンダー・LinkedIn・Twitter を連携すると、自分が実際にやりとりしている人たちが自動的に登録され、その後もプロフィール情報が自動更新されます。
主な機能は以下のとおりです。
- 自動連絡先収集:メール・カレンダー・SNS を接続するだけで人物データが自動構築される
- リアルタイムのプロフィール更新:転職・引越し・SNS投稿などのライフアップデートを自動で反映
- 関係強度スコアリング:やりとりの頻度から「関係が冷えている人」を自動検出
- カレンダーコンテキスト:会議の直前に出席者情報を自動表示
- リコネクトリマインダー:定期的に連絡すべき人を通知
- iOS / Android / Mac / Windows / Web 対応
料金(2026年5月時点)は以下のとおりです。
| プラン | 料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Personal(無料) | 無料 | 最大1,000件の連絡先、基本機能 |
| Pro | $10/月 | 無制限の連絡先、CSV インポート、リアルタイム更新 |
| Team | $40/座席/月 | 最大4名、高度なデータエンリッチメント |
日本語ユーザーにとっての課題
Mesh の設計思想は「自動化」と「ゼロ手入力」にあり、これは魅力的なアプローチです。しかし日本語ユーザーが実際に使おうとすると、根本的な問題があります。
1. UIが英語のみ
公式サイト・アプリともに日本語対応の記載は確認できません。ヘルプドキュメントも英語です。
2. SNSインポートが前提の設計——日本の連絡先文化と合わない
Mesh が自動で人物情報を収集するには、メール・カレンダー・LinkedIn・Twitter 等のアカウントを接続する必要があります。接続できなければ、ほぼ空のデータベースからスタートすることになります。
日本でよく使われる連絡先文化——LINEでの連絡、名刺交換、イベント会場での口頭の自己紹介——は、Mesh の自動取得の対象外です。LINEには公式 API がなく、名刺スキャン機能も搭載されていません。日本のビジネスパーソンが実際に使っているコミュニケーション基盤を Mesh は取り込めません。
3. LinkedIn 依存によるデータ精度の問題
Mesh が人物情報を自動更新する主要ソースは LinkedIn です。前述のとおり、日本では LinkedIn の普及率が低く、特にスタートアップ・コミュニティ・クリエイター界隈でカジュアルに知り合いになる人が LinkedIn に登録しているとは限りません。自動取得の精度は、相手の LinkedIn プロフィールの充実度に依存するため、日本の連絡先では空のカードが並びやすい構造です。
4. 「その場で記録する」設計がない
Mesh は「既存のやりとりを自動的に蓄積する」ツールです。今日初めて会った人を、その場でスマートフォンで記録する使い方は設計の中心にありません。自動化が価値を発揮するのは、すでにデジタルでやりとりが始まっている関係性であり、出会いの最初の瞬間に記録するユースケースには対応していません。
日本語ネイティブの個人CRMが求められる理由
Dex と Mesh をみてきて、どちらも「英語圏のネットワーキング文化」を前提として設計されていることがわかります。LinkedIn でつながった人たちの情報を整理し、英語でコミュニケーションするプロフェッショナルには合っています。
しかし、日本のネットワーキング文化は少し異なります。
名刺ベースでも SNS インポートでもない、その場記録のニーズ
日本のビジネスイベントや勉強会では、名刺交換が行われることもありますが、カジュアルな場では口頭の自己紹介だけで会話が始まることも多くあります。スタートアップのコミュニティイベント、ハッカソン、勉強会、地域のコワーキング——こうした場では、その場で話した内容・見た目の特徴・所属プロジェクトを記録したいのに、名刺がなく、相手がまだ SNS でつながっていない状態です。
この瞬間に使えるツールが、これまで日本語でほとんど存在しませんでした。
見た目の特徴で思い出す文化的ニーズ
「名前は覚えていないけれど、眼鏡をかけていてデザイナーをやっている人」という形で人を思い出す経験は、多くの人に共通しています。海外の個人CRM は名前・会社名・役職を軸に管理しますが、「見た目の特徴」を記録フィールドとして設計しているツールは見当たりません。
日本語ユーザーが本当に必要としているのは、「その場で・日本語で・15秒で記録できて・あとで見た目の特徴から検索できる」ツールです。
(名前を覚えることの難しさと対策については「名前が覚えられない」を解決する方法と記録術もあわせてご覧ください。)
Ennote — 日本語ネイティブの個人CRMとして
Ennote(エンノート)は、「もう忘れない。だから、もっと仲良くなれる。」をコンセプトに開発された、日本語ネイティブの個人CRMアプリです。
iOS アプリと Web ブラウザ版を提供しており、全機能が無料で利用できます(広告による収益モデル)。
Ennote の主な機能
その場で15秒記録
名前・見た目の特徴・グループ(「勉強会」「スタートアップ」等)を3項目入力するだけで記録完了。名刺も SNS アカウントも不要で、初対面の相手の情報をその場でメモできます。
音声入力
「30代くらいで、フリーランスのデザイナー。黒い丸眼鏡が特徴的で、AIの活用に詳しいと言っていた」——歩きながらでも話すだけで構造化されたデータとして保存します。オンデバイス音声認識(ネットワーク不要)+ AI による自動構造化を組み合わせています。
AI チャット入力
「どんな方に会いましたか?」という問いから始まる対話形式で、会話の中から人物情報を整理します。記憶が断片的でも、会話のやりとりを通じてデータとしてまとめられます。
Ennoteのホーム画面
名前・キーワード検索
名前の部分一致検索に加え、「デザイナー」「AIに詳しい人」のような自然文でも検索できます(月30回、AI利用枠)。
関係温度スコア・ヒートマップ
最後に会った日・会った頻度・記録の充実度からスコアを算出し、関係が冷えている人を視覚的に把握できます。
月間出会いサマリー
その月に出会った人たちを AI が自動でまとめます。「今月は5人と新しく知り合った」という振り返りが自然にできます。
CSV エクスポート
記録したデータはいつでも CSV でダウンロード可能。ツールへの依存を減らしながら使えます。
AIチャット入力画面
Dex / Mesh / Ennote の3軸比較
| 項目 | Dex | Mesh(旧Clay) | Ennote |
|---|---|---|---|
| 料金 | $12/月(約1,800円) | 無料〜$10/月(有料機能あり) | 全機能無料 |
| 日本語UI | なし(英語のみ) | なし(英語のみ) | 日本語ネイティブ |
| Android 対応 | あり | あり | なし(iOS / Web のみ) |
| その場記録(名刺不要) | 限定的 | 限定的 | 15秒で記録 |
| LinkedIn / SNS 依存 | LinkedIn 中心 | LinkedIn・SNS 中心 | 不要 |
| 自動連絡先取得 | あり(SNS連携) | あり(SNS連携) | なし(手動記録) |
| 音声入力 | なし | なし | あり(AI構造化) |
| AI検索 | なし | なし | あり(自然文対応) |
| 関係温度スコア | なし(リマインダーのみ) | あり(関係強度スコア) | あり(ヒートマップ付き) |
| 主な利用シーン | LinkedIn 中心のプロネットワーキング | SNS 接続済みの人脈整理 | イベント・勉強会での即時記録 |
どちらを選ぶべきか — 用途別推奨
ここまで読んでいただいた方は、自分がどのツールに向いているか、おおよそ見えてきたかと思います。整理するとこうなります。
Dex が向いている人
- 英語圏のネットワークが中心で、LinkedIn のつながりが主な人脈管理対象になっている
- Gmail・LinkedIn・カレンダーをすでに日常的に使っており、これらと統合された個人CRMが欲しい
- 英語UIに抵抗がなく、月額 $12 を個人ツールに支払えるコスト感がある
- 投資家・MBA 学生など、関係性の育成を「ビジネス的な意思決定」として扱っている
Mesh(旧Clay)が向いている人
- LinkedIn・Gmail・カレンダーに大量の連絡先がすでに蓄積されており、手動入力を最小化したい
- 職歴・転職情報など、SNS 上のライフアップデートを自動で追いたい
- 英語環境に慣れており、自動化された関係管理を重視する
- 既存のデジタルコネクションを整理することが目的で、新しい出会いの即時記録は重視しない
Ennote が向いている人
- 日本語のUIで直感的に使いたい
- 名刺交換ではなく、イベント・勉強会・コミュニティで知り合いになった人を記録したい
- 「今日会ったこの人の名前と特徴を、その場で15秒で記録したい」というニーズがある
- LinkedIn に登録していない知人も多く、SNS インポート前提のツールでは管理しきれない
- 無料でフル機能を試したい
- 費用をかけずにまず使ってみて、合わなければやめやすい入口が欲しい
まとめ:自分の出会いの文化に合うツールを選ぶ
個人CRMは「使い続けられるかどうか」がすべてです。どれだけ機能が豊富でも、UI が使いにくければ続きませんし、前提条件(LinkedIn アカウント・SNS 連携・英語力)が合わなければ最初から機能しません。
Dex も Mesh も、英語圏のネットワーキング文化を前提に洗練されたツールです。LinkedIn を中心に人脈を管理している方には十分な選択肢です。
一方で、「名刺なし、SNS なし、その場で話しただけの人を記録したい」という日本語ユーザーには、これまで適切な専用ツールがありませんでした。
Ennote は、その空白を埋めるために作られました。出会いを資産化しようとか、人脈を仕事に活かそうとか、そういう力んだ話ではなく、「あの人、なんて名前だっけ」と言わなくて済むように。覚えているから、また次に会ったときに自然に話しかけられる。その小さな積み重ねで、関係は少しずつ深まっていく——それだけのことです。
ぜひ一度、無料で試してみてください。
Dex の料金・機能情報は getdex.com(2026年5月時点)を参照しています。Mesh(旧Clay)の料金・機能情報は me.sh(2026年5月時点)を参照しています。料金は為替レートにより変動します。